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枇杷や書館
うさぎうどん
「はい、できたよ。うさぎうどん」
子供特有の金切り声をあげながら、従弟は出来上がったうさぎうどんを受け取った。カレーに使うはずだった玉ねぎやニンジンをゴロゴロ入れて、白出汁で味を調えたねぇね特製のうさぎうどん。お店で見るのより色が薄いと文句を言っていたが、食べた途端にニコニコしはじめる。
「まあまあだね」
「素直に美味しいって言いなさい」
「うんめー」
祖父の方言の真似をしながら私に顔を近づけた。従弟の鼻を軽くつまんでから、窓の外を眺める。少し曇り気味だが、黄身餡みたいな色の満月が照り映えていた。月の模様が良く見える。ふと、月見をしながら食べようと思い立ち、どんぶりをもって外に出る。大事に大事にうどんを食べていた従弟も付いてきた。
「綺麗だねぇ。ウサギさんこっち見てるかな」
「後でお供えしなきゃね」
「うさぎうどん?」
「伸びちゃうから団子だけね。あんたも早く食べなよ」
「うん!」
従弟は箸を団子に突き刺すと、ウサギに見せびらかすように月に向け、食べた。
終
(2/2)
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